なないろ不動産・今城直美さんインタビュー「起業のビジョンは『誰か』と描くもの」

  • この記事は7分以内で読めます。
  • 取材は2021年12月に行いました。

「Re:高松」編集長のオーシカです。

今回は、香川県で起業を目指す女性に向けて、一歩先ゆく先輩からの声をお届けさせていただきます。

高松市塩上町で不動産業を営まれている、なないろ不動産の今城直美さん。今城さんは2019年に50歳で開業して、現在3年目を迎えられています。起業を「事業」に変え、ステップアップし続ける秘訣について、お話をお聞きしました!

目次

人を巻き込む『旗振り役』が自分の適正だと知った

―今城さんのなないろ不動産は、「女性の生き方を応援する不動産屋さん」というテーマがありますよね。ひと口に女性といっても、どういうお客さんが多いのですか?

起業を視野に物件を探されている女性の方が多いですね。特にカフェやお菓子のお店とか、店舗をやりたいという方。飛び込みで来られる人はほぼ0で、なんらかの目的を持ってお問い合わせしてきてくださる方が中心ですね。

―今城さんご自身は起業当初から、お客さんのイメージは明確だったのでしょうか?

もちろん女性がターゲットというのはあるけれど、だんだん今のようになっていったという感じかな。今でこそいろんな人とご縁を広げたり、SNSで積極的に情報発信したりしているんですけど、以前は自分が表に出ることは苦手だったんです。

自分とまったく価値観が違う人を前にすると、躊躇してしまう自分がいて。自分はこの部屋に対してこういう捉え方をしているけれど、お客さんはまったく違う。そう感じたときに「この人の力になるのは自分にはムリだ」と諦めがちになることが多々ありました。

―その価値観の違いを受け入れられるようになったのは、どういうきっかけからだったのですか?

「これじゃダメだ」と思って、異業種交流会など、人と出会う機会をとにかく増やしたんです。いざ新しい人の輪に飛び込んでみたら、「そこからジャブを打つの!?」みたいな面白い価値観を持った人がたくさんいて、自分を変えるターニングポイントになりましたね。

他人の価値観に触れながら、同時に自分を知っていくような感覚でした。

―そして自分の考え方を変えていったら、周りもいい方向に変わっていったということでしょうか?

まさにそうですね。私は人に恵まれたと思います。スタート当初は何事にも「私にできるだろうか?」と煮え切らなくなってしまうタイプだったけれど、起業家仲間が心のブレーキを外すサポートもしてくれました。

彼女たちと取り組んだ仕事にも、私の転換点になった出来事があるんです。

全室女性起業家のためのマンションを仲間たちと企画

初めて管理することになった物件を、当時知名度のない自分がどう埋めればいいかとても悩みました。不動産屋としてのスタートラインに立てたという嬉しさがある反面、心のなかはプレッシャーでいっぱい。

そこで助けになってくれたのが仲間たちで、私が「マンション全部を女性起業家で埋めたい」と発信すると、みんな協力してくれたんです。いつも私の心のケアをしてくれる仲間も含めて。

―女性起業家のためのマンションって、面白いコンセプトですね!

1室をモデルルームにして、事業所を探している女性は私が対応。仲間たちもそれぞれ別の部屋に相談所を構えて、コーチング・SNS活用・資金調達や事業計画の作り方といった起業に必要なことを総合サポートできるような場を作りました。

4部屋あったんですけど、1号室から4号室まで行ったら起業の相談がぜんぶできてしまうという。

―それは、起業を目指す方にとっては心強い場所ですね。

結果的に美容関係の女性が入ってくれたりして、部屋を埋めることができました。私自身もプレッシャーから解放(笑)。仲間たちにとっても面白い試みになって。

この取り組みは私の原点の1つですね。いかに仕事を面白がりながら、同時にお客さんに喜んでもらえるか? を考えるきっかけになりました。

何より、戸惑いもあったけれど、本当の私は『旗振り役』が好きなんだということが分かりましたね。どんどん人を巻き込んでいけばよかったんだって。

3年後に自分が何をしていたいか?

―お聞きしている感じ、今城さんは不動産屋さんでもあり、人と人とをつなぐ『コネクター』でもあるという印象です。

そうかも。私は目標を立てるとき、それを『誰と』達成するかを考えるんです。これも起業した当初のことですが、3年後の自分のビジョンを考えるという機会がありました。

『チームKONJYO』と名付けて、「写真部隊を作る」「ステージング部隊を作る」「交流会を企画する部隊を作る」などなど、言い出せばキリがないくらい「3年後の私はこんなことをしている!」ということを書き出していきました。

「部隊を作る」という考え方1つとっても、私はコネクター気質なんだな、と思います。

事務所の壁にはご自身のステップアップの道筋が具体的に示されていました。

―いま起業して3年目ですよね。目標はどれくらい達成できていますか?

半分以上は達成できていますね。

それぞれの目標の根本には「女性が自立できる場所を作る」というモットーがあって、そのモットーに1本筋が通った仕事ができたとき、私は深い喜びとやりがいを感じられるようです。

目指す方向からズレていないことは実感できているし、このまま突き進んでいきたいですね。

理想の借主を呼び込むために注力していること

―ちなみに、「ステージング部隊」とは、どういう試みなのでしょうか?

ホームステージングといって、モデルルームを作るチームを作りたいということですね。ステージングとインテリアコーディネートの違いは、インテリアコーディネートはお部屋をキレイに着飾ること。ステージングは、ターゲットを絞った魅せ方をすることです。

たとえば、高齢者が安心して暮らせるお部屋を、モデルルームとして仕立てるような。ステージングに必要なのは、何よりも来て欲しいお客さんは誰か? を想像することです。

お金をかけなくても、極端な話100円ショップで買えるものでも、お部屋で理想の借主さんを呼び込む演出ができるんですよ。借主さんが住まいに対して抱く理想や悩みが分かる、私たち不動産屋ならではのスキルだと思います。

ステージングは3年後のビジョンにも書いていた通り今も力を入れていますし、これからいっそう取り組んでいきたい分野ですね。

「踊れる! 頼れる! 人気者で何でも屋」のアカレンジャーは今城さん。「早くチームKONJYOにならないと、埋まっちゃうよ」。ユニークな仲間募集。

物件紹介は開業後のあるべき姿を描くサポート

―話は戻って、たとえばカフェなど飲食店ができる物件を探している人に対して、どんな提案をするのですか?

物件目線ではなく、まず借主さんの事業がどんな人をターゲットにしていてどんな料理を出すつもりで、どんな内装にするつもりか? といったことを時間をかけてヒアリングしますね。

もちろん踏み込んだことは言いませんが、自分が物件に関わる以上、お店を1日でも長く続けて欲しいという想いがあるので。だから客観的に見ても、なないろ不動産は物件探しに時間がかかる方だと思います。

自分のお店のあるべき姿を鮮明に描けるのは、ほんのひと握りの方です。たとえば、年配の人にゆったり利用してもらいたいのに若者向けの店構えをしていたら、ちぐはぐでしょう?

時間をかけてすり合わせていったうえで、あるべき姿が見えたときには、私にも「バシッとハマる」物件が思い浮かんでいることが多いです。

―たとえ時間がかかっても、ユーザーのニーズと物件の適正がぴったり「ハマる」場所が見つかった方が、借主さんのためですよね。

はい。さらに、契約していただいた方には、「なないろの会」という勉強会にもお誘いしているんですよ。

これは先ほどいった女性起業家向けマンションと同じ要領で、仲間を中心にゲスト講師を招いてきて、SNSの勉強をしたり、リピーターを増やすためにはどうすればいいか? といったことを学んだりしていただけるようにしています。

―まさに、今城さんのコネクターとしての一面が発揮されながら、お客さんにもさらに喜ばれる素晴らしい取り組みですね。

起業初期はイベントを企画しよう

私の場合、女性起業家向けマンションも含めて、なないろ不動産を認知してもらうためにいろんなイベントを企画しています。

お客さんとの井戸端会議のなかから相談が生まれることもありますし、不安になりながらも、起業初期からやってきてよかったことです。一部ですが、今回は3つご紹介していきますね。

なないろてくてく会

「てくてく」の字の通り、人と集まって街中を散歩するイベントです。

散歩するだけなんですけどメリットが4つあって、1.気になる空き物件を足で探せること 2.一緒に散歩する人から情報を仕入れられること 3.地元の知らなかった一面を再発見できること 4.歩くから健康になれること です。

たとえば、高松のアーケード街を歩きながら情報発信すればお店の宣伝にもなって地域活性にもつながりますよね。

私は「あの物件空いてるかな?」「どこが管理しているのだろう?」「駐車場が近くていい物件だなあ」とか、どうしても不動産屋目線になってしまいますが(笑)。

六坪屋

六坪しかない空き物件を埋めるために始めたイベントです。

片原町商店街の片隅で六坪のビルを管理することになったんですけど、1階の店舗だけがなかなか決まらなくて。私も胃がキリキリするほどだったんですけど、借主が使い方をイメージできるようなモデルケースを仲間たちと発信していきました。

お惣菜を販売してみたり、コーヒーを売ってみたり。お客さんを呼び止めて来てもらわないといけないから、大変。5ヶ月続けたんですけど、六坪という狭さがネックだったのか、残念ながら開催中は契約が決まらなかったんです。

それでも最終的に、イタリアンのお店に契約が決まりました。

六坪屋というイベントは、お店を借りる人の気持ちを本当の意味で考えるいいきっかけになりました。私にとって特に思い出深い活動ですね。

蔵プロジェクト

古くから残っている「蔵」にどんな活用方法があるかを考えるイベントにしたいと思って、いま企画している最中です。

これは物件を貸したり改装したりといった目的ではなくて、たとえば蔵に集まってお月見階をしたり、ヨガや瞑想をしたりお茶会をしたり。

人って目に入る情報で他人を判断してしまうところがあるじゃないですか?

たとえば蔵という暗闇のなかでコミュニケーションをしてみたらどうなるのか? 一晩中起業家同士で事業について話したらいいアイデアが生まれるのか? といったことをワクワクしながら考えています。

なないろ不動産noteより。記事はこちら→https://note.com/nanairosan77163/n/na97dfbef3d13

『誰か』と描ける目標を立てる!

―さて、(取材時点では)2022年、「3年ビジョン」の集大成としてどんなことを目標にしていますか?

4つあります。順番にお伝えしていくと、

  • 「わたし、香川に住む」
  • 「わたし、大家になる」
  • 「わたし、店を出す」
  • 「わたし、家を買う」

「わたし、香川に住む」は、香川県の移住者さんに向けて、物件の紹介を入口に移住の総合相談もしていけるような取り組みです。

私も聞いて意外だったんですが、移住者の方って、IT関係のようにどこでもできる仕事を持ちながら、いろんな移住地を転々としているらしいんです。

そんな「今度はちょっと香川に住んでみようかな」という人たちの受け皿になれれば、と考えています。

「わたし、大家になる」は、物件オーナーになりたい人のための取り組み。コロナもあって、安定した家賃収入が欲しいという人からの相談が増えているんです。

地元のことをよく知っている女性がオーナーになれば、地域のためにもなりますよね。特に仕事は辞めたけど年金をもらうまでにはまだ時間があるという年配の方のために、サービスを提供できればいいな、と。

年配の人の力になりたいというのは3年ビジョンのなかにあったことなので、必ず実現させたい目標ですね。

「わたし、店を出す」はこれまでやってきた取り組みの継続。

「わたし、家を買う」は、いわゆる家の紹介なんですが、特に年配の方に向けて発信していきたいと考えています。今は便利な駅近に住んでいるけど、老後はもう少し落ち着いたエリアに住みたいという方が対象ですね。

―新しい目標も、誰かを巻き込むことが視野に入っているのですか?

もちろんです! 地元の物件事情に詳しい方、香川移住の経験者さん、そして引き続き仲間たちにも力を借りなきゃいけないし。

『誰と』と描ける目標を考えるのはワクワクしますし、こうして口にすることで応援者が現れて、より多くの人を巻き込んでいけるかもしれません。だからとにかく前進あるのみ! ですね。

取材後記と企業情報

僕自身も高松という場所で起業をしているのですが、今城さんの「『誰と』ビジョンを描くか」という考え方には、とても刺激をいただきました。

目標というと、とかく「自分が」「何を」「どう」クリアするかという視点で考えがちですが、『誰と』が決まれば必然的に「何を」「どう」の部分も決まってきます。

起業はスタート地点であり、一生の生業にできる「事業」に育てていかなければなりません。

自分にない力を潔く借りる。そして誰かが困ったときには、自分の力をシェアする。現代らしい事業のヒントを、今城さんから学ばせていただきました。

これから香川県内、特に高松市内で店舗開業を目指す女性の方は、今城さんのなないろ不動産を頼ってみてはいかがでしょうか? 今度はあなたが今城さんの力を借りて、起業という目標を叶える番です。

なないろ不動産

  • 住所 香川県高松市塩上町2丁目17-20-201号
  • ご相談・お問い合わせ用TEL 087-880-8800
  • 営業時間 9:00~18:00
  • 定休日 不定休(土・日は予約優先)
  • Mail info@nanairo-fudousan.com

※基本的に事務所不在のことが多いとのことなので、物件相談の場合は事前に電話またはメールで問い合わせしてみてください。

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