三好石材・三好正人さんインタビュー「庵治石の97%の価値を発信していく」

この記事は3分以内に読めます。
取材は2021年10月に行いました。

「Re:高松」編集長のオーシカです。

今回は、1900年創業(!)庵治石の採掘・加工から墓石の施工管理まで一貫して手がける、株式会社三好石材・三好正人社長のインタビューをお届けします!

高松市の牟礼〜庵治方面に足を運べば、山々から石を切り出している場面を、市民の皆さんなら一度は目にしたことがあるのでは?

三好社長にはお墓のあるべき姿について、そして庵治石の『97%の価値』ついてお聞きしました。庵治石がお墓だけでなく、身近な場所でも使われていることを知っていただければ、見方が変わってくるんじゃないかと思います!

しかし一方で「お墓」というものは、近しい家族や親族が亡くなるということでもないと、なかなか詳しく知る機会がないですよね。

オーシカ

JR高松駅や、市内の有名ホテルにも庵治石が使われているんですよ。

目次

お墓は先祖を悼むものであり、子孫繁栄を願うものでもある

―さっそくですが、最近では「後継ぎがいないから」「一族のお墓がある場所で暮らしていないから」といった理由で、『墓じまい』という動きが増えていますよね。(墓じまい…お墓の管理を一族ではなく別の人に移すこと)

ええ。時代の流れもあって、仕方がないことだとは思います。

ただ墓じまいの場合、他の方とご遺族の骨が一緒になったり、散骨されたりということもあります。墓じまいをされたあとで後悔される方もいらっしゃるので、決断をする前に、お墓というものの意味について、もう一度考えていただきたいな、と。

―意味といいますと…?

普通、お墓を通して故人から先祖の供養まで行うという目的で、お墓を建てられると思います。

ただ考え方としては、子孫繁栄を願っての意味合いも大切です。これからを生きる方がお墓を代々継いでいけるような、過去から未来までをつなぐ役割があるんだよ、ということですね。

オーシカ

なるほど、血のつながりをリアルタイムで残していくということですね。

特に男の人は、一度家を出てしまうと、なかなか親元に寄り付かなくなるということもあるようですね。法要のような一族の行事でもないと、戻る理由を見つけられない。

私もまさにそうで、父親が亡くなったあと母親が実家で一人暮らしていたんですが、なかなか帰るきっかけがつかめなくて。

「お墓や仏壇にお参りするつもりで帰ってきたらいいんだな」と考え直してみたら、気が楽になった覚えがあります。

―「お墓=過去から未来をつなぐ場所」と考えると、ライフイベントが起こるたびに訪れていい場所なのかもしれませんね。

一族単位ではなく、一人一人が家系単位で先祖供養してもいい

私は次男なんですが、いわゆる本家筋というものは、兄がずっと先祖を祀っているんですね。ただ、「私は私なりの先祖供養もしなければ」と考えるようになっていきました。

たとえば、兄と私で共通の先祖がいるわけですけど、私の妻が関わってくると、兄とは違う私の家系の供養の仕方もできてきますよね。

―確かに、そう考えると、「お墓=一族のもの・誰かが供養するもの」ではなくて、一人ひとりの当人が先祖と向き合う機会になりますね。

はい。一人ひとりがお墓を持つことで、本当の意味で『自立した家』になるんじゃないかと。私でしたら、本家ではない。分家初代として続く家づくりをしていかなければいけないな、と思っています。

オーシカ

お墓は自立した家を作るものかあ。そういった目線で見ることはなかったな。

専門化・分業化されている、庵治石採掘加工の現場

―三好石材さんは、1900年創業とかなり歴史が古い企業です。庵治石の採掘・加工から墓石の施工管理までワンストップで手がけるというのは、石材の文化として一般的なのでしょうか?

いえ、当社のように一貫して行っているところは少ないですね。組合も「採掘」の組合と「加工」の組合があったり、加工の組合は加工の組合で、この牟礼地区と庵治地区で別になっていますし。

※三好石材HPより引用

―役割が分業化されているということでしょうか?

はい。庵治石は専門化・分業化の文化なんですよ。一例を挙げてみると、

・石に文字彫刻だけを行う人、仏像を掘る人
・模様細工をする職人
・研磨を専門でされるところ
・石を丸く加工するのが専門の会社

などなど。お一人やご夫婦だけでやれているところも、結構多いんです。うちも、もともとは祖父の代に採掘が始まって、だんだんいろんなことを手がけるようになったという歴史があります。

―そうすると、専門化されているところは、技術の継承が課題になってきますね。

そうなんです。当社は当社なりの技術継承を進めているところなんですが…それをお話する前に、墓石になる庵治石とそうじゃない部分について、お伝えした方がよさそうですね。

庵治石は最高級の石。97%が使い道がないのはもったいない

知ってましたか? 採掘した庵治石から墓石になるのは、たった2〜3%だけなんですよ。

オーシカ

え! そうなんですか? もちろんすべて使えるわけじゃないとは思いましたが…

残りの97%は、これまで廃材だったんです。石垣の1つとして使われたり、庭の灯籠やお地蔵さんなどにも使われたり。

しかし、そういった需要もなくなってきています。庵治石は日本でも最高級の品質なのに、せっかく採れた石を廃材にしてしまうのはもったいない

―では、その97%に、どのような価値を持たせようと…?

当社の場合、その97%の部分を、建築方面に生かせるよう働きかけをしています。

店舗設計の専門家さんが、庵治石を気に入ってくれましてね。庵治石の持つ色合い、壁面に使っていただくと醸し出される高級感などを。

瓦町にあるバー・足袋さんでは、入口をくぐっていく景観や、カウンターの壁面に庵治石を使っていただいています。

BAR足袋

―なんでしょう…自分が香川県民だからなのもあってか、写真を見ただけでも落ち着きを感じますね。

店舗のほかにも、住宅の外壁や、ホテルの浴室の外壁にも使っていただいていますね。中央商店街にあるホテル川六さんや、香川町のザ・チェルシーブレスさんの浴室の壁は、庵治石なんですよ。

ホテル川六
ザ・チェルシーブレス
オーシカ

泊まることがあったら、ぜひこの目で見てみたいです!

使っている石の部位によっても、全然表情が違うんですよ。たとえば…

かさね肌…石と石の層を割って現れる部分の1つ。高級感を感じさせてくれます。先ほどお伝えした2つのホテルや、JR高松駅のバスターミナル壁面も、かさね肌を使っています。

オーシカ

あのバスターミナルの壁面は庵治石だったの⁉︎

さび…赤茶色をした、庵治石の表面を切り出した一部分。落ち着きのある風合いで、いろんな場所に合いますね。前述のバー・足袋さんでは、このさびを使っています。

写真上がかさね肌、下がさび。同じ石ですが、ひと目見て色合い・模様が違うのがわかります。

石と相談しながら、建築材に変えていく

―石を建築に使うのは新しいチャレンジだったわけですよね。異業種進出ということで、苦労もあるのでは?

そうですね、職人の腕・器量によるところも大きいですが、石を建築材にしようと思ったら、一日で一平米分できるかできないかくらい。

※三好石材HPより引用

必要とされる場所に過不足なく石が合うよう、何度も何度も調整するんです。『石と相談しながら』ですね。

―建築現場で石を加工して組み上げていくんですか?

現場でやるときもありますし、街中や施設などの場合は埃や騒音が出るので、会社の加工場で建築材を作って、いったんバラしてまた現場で組み上げるときもありますね。

やはり、職人の腕にかかっています!

最高級の石材・庵治石の「文化」を残していきたい

―建築分野への進出というのが、三好石材さんなりの技術継承の一環であるわけですね。

ええ。「技術」という点ではもちろん、「文化」を残していくという考え方が大切だと思います。

うちには若い職人もいますが、自分たちが作り上げたものが半永久的に残り、死んでも作品として残っていくことに、誇りを感じてもらいたい。

ですから、建築材のように、庵治石が用いられるシーンを増やしていくのが、私の勤めでもありますね。

庵治石ってどの家にもあるようなものでもないですし、少しでも身近に感じていただけるような活動を推し進めていきたいです。

―『97%の部分』を含めて、もっと庵治石の価値を発信していく、と。

石材としての庵治石は、日本でもトップを担っていると思うんです。ただ、それを保ち続けるのも大事。

三好石材としても、この地域の石材業者も、みんながみんな頑張って質を維持し続けています。

最高級ブランドを保ち続けるために、文化としての価値の発信にも、力を入れていきたいですね。

取材後記

冒頭でも書いたように、高松市民として庵治石の採掘現場は見たことがあったし(遠目からですが)、庵治石のお墓も目にしたことはありました。

しかしながら、今回取材をさせていただいて初めて、お墓と先祖〜子孫の関係、庵治石の97%が廃材となりかけていたことなど、身近にありながら知らなかったことを知る機会になったと思います。

オーシカ

香川で暮らすみんなが庵治石を活用するアイデアを発信すれば、もっともっと文化が広がっていきそうですね。

三好石材さんのホームページはお墓や庵治石について勉強になる内容ばかりなので、ぜひこちらもチェックしてみてくださいね!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!

コメント

コメントする

目次
閉じる